面接の最後に、あるいは志望動機の締めくくりに、「入社後は精一杯頑張ります」と言った。その瞬間、面接官の表情が少しだけ曇ったように見えた。そんな経験はないでしょうか。
40代・50代で転職活動をしていると、若いころの面接とは違う手応えのなさに戸惑うことがあります。経歴は悪くないはずなのに、面接が進まない。熱意は伝えているつもりなのに、なぜか評価に結びつかない。私も人事として年間500人以上と面接してきましたが、書類や受け答えの内容は悪くないのに、どこかで評価が止まってしまう方には、ある共通の癖がありました。
その一つが、「頑張ります」「精一杯努めます」で話を締めてしまうことです。誤解のないように先に言っておくと、この言葉を口にしただけで落ちるわけではありません。ただ、面接官が知りたい情報を一つも増やさない言葉であり、使えば使うほど、本来の強みが薄まってしまいます。この記事では、面接官側にいた人間の目線で、なぜ評価が上がらないのか、何に言い換えればよいのかを具体的にお伝えします。
元人事の視点:面接官は「頑張ります」を聞いたとき、頭の中で何をしているか
面接官は、話を聞きながら頭の中で、ほぼ無意識に次の問いに答えを出そうとしています。
- この人は、入社後に何をしてくれそうか
- それは、今の話の中に根拠があるか
- 自社の仕事・環境で、その力は再現されそうか
「頑張ります」は、この3つの問いのどれにも答えていません。何を、どの水準まで、どのくらいの期間で、という中身がないからです。面接官は「そうですか」とうなずきますが、メモ欄には何も書けません。評価シートに転記できる情報が増えないのです。
ここで大事なのは、「頑張る」という態度そのものが悪いのではない、ということです。問題は、頑張るという言葉が確認も検証もできない点にあります。面接は、限られた時間で「この人と働いたときの未来」を推定する場です。推定の材料にならない言葉は、聞き流されます。
40代・50代だと、さらに厳しく聞こえる理由
20代の応募者が「頑張ります」と言えば、伸びしろへの期待として受け取られる余地があります。ところが40代・50代の応募者には、企業は「教育して育てる」ではなく「自走して成果を出してくれる」ことを期待しています。そこへ「頑張ります」と言われると、面接官の内心はこうなりがちです。
「頑張るのは当然として、具体的に最初の半年で何を変えてくれるのか。それを聞きたいのだけど」
つまり、年齢が上がるほど、意気込みの言葉は「中身を省略している」と読まれやすくなります。ここを理解しておくと、言い換えの方向性が見えてきます。
「頑張ります」が出やすい5つの場面とNG例・OK例
実際の面接で、この言葉が出やすい場面は決まっています。場面ごとに、NG例とOK例を並べてみます。なお以下は、よくある受け答えのパターンを分かりやすく再現した例であり、特定の応募者の実話ではありません。
場面1:志望動機の締め
NG例:「御社の事業に強く惹かれております。入社後は、これまでの経験を活かして精一杯頑張りたいと考えております。」
OK例:「御社の法人営業の立ち上げ期に、前職で培った新規開拓の型を持ち込めると考えています。入社後3か月は既存顧客の状況把握に徹し、半年を目安に自分が担当する領域の改善案を一つ提案したいと考えています。」
OK例のポイントは、期間と行動が入っていることです。「3か月」「半年」という区切りがあるだけで、面接官は自社での姿を想像できます。数字は大きくなくて構いません。大切なのは、確認できる約束になっていることです。
場面2:自己PRの締め
NG例:「このように、粘り強さには自信があります。御社でも粘り強く頑張ります。」
OK例:「このように、関係部署の調整に時間がかかる案件でも、途中で投げ出さずに着地させてきました。御社のように部門間の連携が多い環境でも、同じ動き方ができると考えています。」
自己PRは「過去の事実」から「未来の再現性」へ橋を架ける作業です。橋の最後に「頑張ります」を置くと、橋が途中で切れてしまいます。
場面3:「入社後にやりたいこと」への答え
NG例:「まずは仕事を早く覚えて、一日でも早く戦力になれるよう頑張ります。」
OK例:「最初の1か月は、現場の業務フローと用語を覚えることを優先します。そのうえで、前職で行っていた工程の見直しの経験が活かせそうな箇所があれば、上長に相談しながら小さく試したいです。」
NG例は謙虚で感じが良く、悪い印象は与えません。ただ、評価はされません。評価されるのは「覚える順番」と「経験の使いどころ」が見えたときです。
場面4:面接の最後の一言
「最後に何かありますか」と聞かれて、「特にありません。本日はありがとうございました。入社できましたら精一杯頑張ります」で終える方は少なくありません。最後の一言は、面接官の記憶に最も残りやすい部分です。ここを定型句で終えるのは、もったいないと私は思います。
OK例:「本日のお話で、御社が今後〇〇に力を入れていくと伺い、私の△△の経験が役に立てるとあらためて感じました。もしお伝えし足りなかった点があれば、補足させてください。」
要点は、面接で聞いた内容を一つ拾って自分の経験と結びつけること。傾聴していた証拠にもなります。
場面5:転職理由・退職理由の締め
NG例:「前の会社では評価されなかったので、環境を変えて頑張りたいと思い転職を決めました。」
この言い方は、「環境が変われば頑張れる」と聞こえます。面接官は「ではこの会社で環境が合わなくなったら頑張らなくなるのか」と考えます。
OK例:「前職では○○の領域を深められた一方、より事業全体に近い立場で意思決定に関わりたいと考えるようになりました。御社ではその機会があると伺い、志望しています。」
転職理由は「頑張る環境」ではなく、「次にやりたい仕事の方向」で語るほうが、前向きで一貫性があると受け取られます。
「頑張ります」を言い換える3つの原則
場面ごとのOK例には、共通する型があります。私が面接官として「この人の話は伝わる」と感じた方の話し方を整理すると、次の3つになります。
原則1:「何を」を名詞にする
「頑張ります」の前に何が入るかを考えてみてください。「営業を」「採用の仕組みづくりを」「若手の育成を」。名詞を入れて、はじめて仕事の話になります。「頑張る」を使わずに文を作る練習をすると、自然と名詞が出てきます。
原則2:「いつまでに」「どの程度」を一つだけ入れる
全部を数値化する必要はありません。むしろ、盛った数字は逆効果です。入社して間もない段階で約束できる範囲、たとえば「3か月」「最初の1件」「週に1回」といった小さな区切りを一つ入れるだけで、発言の信頼性は大きく変わります。実績がない領域に大きな数字を約束するのは、避けてください。
原則3:「過去の事実」を一つだけ根拠にする
将来の約束には、過去の事実を一つだけ添えます。「前職で同じ規模の取引先を担当していたので」というように。根拠が一つあれば、約束が単なる意気込みではなく、再現可能な計画になります。
この3つは、そのまま答えを組み立てる型になります。「名詞(何を)」+「区切り(いつ・どの程度)」+「根拠(過去の事実)」。三つ揃わなくても、二つ入っていれば「頑張ります」単独とは別物です。
具体的な改善アクション:今夜からできる5つの手順
- 自分の回答をすべて書き出す。志望動機、自己PR、入社後の抱負、逆質問の最後。声に出して話してみて、「頑張ります」「精一杯」「努めます」「貢献したい」で終わっている文末に線を引きます。
- 線を引いた文末の直前に「何を」を足す。名詞を一つ入れるだけで構いません。
- 区切りを一つ足す。「最初の3か月は」「半年を目安に」など、確認できる時間の枠を入れます。
- 根拠を一つ足す。職務経歴書にある事実から一つ選びます。書類と面接の話がつながると、一貫性があると見られます。
- 声に出して時間を測る。締めの一文が長くなりすぎる場合は、区切りか根拠のどちらかを削ります。面接の回答は一つあたり1分前後に収めるほうが聞き取りやすくなります。
面接前日にやっておくと安心なこと
文章で整えても、本番で口が滑って「頑張ります」と言ってしまうことはあります。その場合は、言ってしまった直後に一文足せば十分に取り返せます。「頑張ります、と申し上げましたが、具体的には〜」と続けるのです。言い直しは面接で減点されません。むしろ、自分の発言を見直せる人という印象になります。
面接後の評価会議では、どんな言葉が残るのか
面接が終わったあと、面接官は評価シートにコメントを書き、必要に応じて他の面接官や採用責任者と話し合います。このとき、会議の場で語られるのは「あの人は意欲が高かった」といった漠然とした印象よりも、「前職で◯◯を担当していて、入社後は最初に△△に取り組むと言っていた」といった、具体的な発言の断片です。
断片が残らなかった応募者は、評価の場で説明のしようがありません。「悪くはなかったと思います」という一言で、他の応募者の話に移ってしまいます。逆に、中身のある一文を一つ残せた応募者は、その一文を根拠に推薦してもらえます。面接官が推薦するための材料を、こちらから渡す。そう考えると、「頑張ります」で締めるのがどれほどもったいないかが分かるはずです。
また、複数回の面接がある場合、一次面接と二次面接で話す内容が食い違わないことも見られています。一次で「最初の3か月は状況把握に徹する」と言ったのに、二次では「すぐに成果を出します」と言えば、一貫性を疑われます。面接ごとに言い換え案をメモしておき、同じ軸で話すようにしてください。
「頑張ります」を使ってもいい場面もある
ここまで否定的に書いてきましたが、この言葉をゼロにする必要はありません。次のような使い方なら、問題になりません。
- 具体的な内容を述べたあとの、気持ちの添え物として使う(「〜を目標に、精一杯頑張ります」)
- 面接の冒頭や最後の挨拶など、儀礼的な場面で使う
- 相手から「意気込みを聞かせてください」と直接聞かれたときに、内容とセットで使う
要は、中身を言ったあとの添え物か、中身の代わりかの違いです。中身の代わりに使うと、評価が止まります。
この考え方が向かない人もいる
最後に、この記事の内容が当てはまりにくいケースも書いておきます。現場作業や接客など、人柄・意欲そのものを重視する職種の面接では、元気のよい「頑張ります」が好印象になる場合があります。また、会社や面接官の好みによっては、数値や期限を言い切ることを「大げさ」と受け取る人もいます。応募先の雰囲気や職種に合わせて、使い分けてください。ここで書いたのは、あくまで採用側にいた私の経験に基づく見方の一つであり、すべての面接官に当てはまる正解ではありません。
まとめ:意気込みは、中身と一緒に出す
「頑張ります」が悪いのではありません。それだけで話を終えると、面接官にとって評価できる材料が増えないのです。
- 面接官は、頭の中で「何をしてくれるか・根拠があるか・再現できるか」を確認している
- 「頑張ります」はそのどれにも答えていない。40代・50代では、より「中身の省略」と読まれやすい
- 言い換えは「名詞(何を)」+「区切り(いつ・どの程度)」+「根拠(過去の事実)」の型で作る
- 使うなら、中身を述べたあとの添え物として使う
まずは、今あなたが用意している志望動機の最後の一文を見てください。そこに「頑張ります」はありませんか。もしあれば、今日、名詞を一つ足してみてください。それだけで、面接官が受け取る情報は確実に増えます。あなたの面接では、最後の一言に何と言っていますか。
※PR:本記事はアフィリエイト広告を含みます
当サイトがおすすめする選択肢の一つです
転職エージェントは相性による部分も大きいため断言はできませんが、サポート体制や求人の幅という観点で検討する価値があるサービスとして以下を紹介します。
面接での「実際の答え方」まで知りたい方へ
このブログでは、面接官が何を見ているかという考え方を中心に書いています。実際の面接でどう答えるか、質問別の回答テンプレートや、職務経歴書・二次面接・条件交渉までを含めた具体的な内容は、noteにまとめています。


コメント